[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] App Storeの売上ランキングから見える ゲームアプリ市場の変化

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2014/06/16 (Mon)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] App Storeの売上ランキングから見える ゲームアプリ市場の変化

-はじめに-

毎年、競争が激しくなるスマートフォンのゲームアプリ市場。動向変化のサイクルが非常に早く、同じ成功法則が長く通用しないことから、年々市場攻略も難しくなってきています。
そこでまずは、特に昨年からの1年で、ゲームアプリマーケットがどのように大きく変化してきたのかを、アプリマーケットの主戦場となっているApp Storeの動向から改めて振り返ってみたいと思います。

AppStoreトップセールスランキングに見る、変化

まずは下に、昨年と今年の6月9日時点における、App Storeの「トップセールス」ランキングの上位20位を表にまとめてみましたのでご覧ください。この表の中からだけでも、非常に多くの変化が起きていることを、見て取ることができるからです。

図1

▲App Storeにおける、昨年と今年のトップセールスランキング比較(20位まで)

AppStoreトップセールスランキングに見る傾向 ~ネイティブシフト~

表から見て取れる傾向の1つは、高い売上を上げるゲームの傾向が変化し、上位タイトルの流動性が激しくなっていること。ここ2年くらい言われ続けていることですが、最近ではいわゆる“ネイティブシフト”の傾向が強まっており、Webを主体としたハイブリッド型のゲームアプリは人気が低下傾向にあるほか、熱心な利用者が多いとされる、ダウンロード課金タイプのパチンコ・パチスロ系アプリも、ランキング上位に現れる機会は減少しています。そうした市場変化の中で勢力を伸ばしてきているのが、主としてコンシューマーゲームなど、元々モバイル以外のゲームを手掛けている、クライアント側のゲーム開発に強みを持つメーカーです。

クライアント側のゲーム開発に強みを持つメーカーの急速な伸び

「パズル&ドラゴンズ」のガンホー・オンライン・エンターテイメントを筆頭に、バンダイナムコゲームス、スクウェア・エニックス、セガなどが昨年から今年にかけて伸びを見せており、執筆時点(6月9日)時点における、App Storeのゲームアプリトップセールス上位100位以内のうち、4分の1以上を占めるに至っています。またsupercellやKing.comなど、海外系のベンダーが徐々に勢力を伸ばしているのも、クライアント側のゲーム開発技術に強みを持つがゆえといえるでしょう。

図2

▲App Storeのゲームカテゴリにおける、トップセールス100位の分類(6月9日時点、筆者調べ)

AppStoreトップセールスランキングに見る傾向 ~IPタイトルの増加~

もう1つの傾向として見て取ることができるのは、既にアプリマーケット上に100万以上のアプリが存在することもあり、昨年と今年とではゲームの開発だけでなく、プロモーションやマーケティング戦略が非常に重要となってきていることです。
そうした取り組みで目立つ要素の1つは、IP(知的財産)を用いたタイトルの増加。人気ゲームやアニメを用いることで、元のIPのファンを獲得すると共に、知名度で新規ユーザー獲得にもつなげやすくなることから、IPを活用する事例は増加傾向にあるようです。

IPタイトル増加を象徴する、バンダイナムコゲームスのアプリ

IPに強みを持つバンダイナムコゲームスが、トップセールスの100位以内にアプリを10もランクインさせていることが、その傾向を象徴しています。

図3

▲App Storeのゲームカテゴリにおける、トップセールス100位の企業・グループ別分類(6月9日時点、筆者調べ)

進むゲームアプリ市場の拡大と、競走の激化

実際、原作の人気が非常に高い「ONE PIECEトレジャークルーズ」は、5月12日からの配信開始で4日後には100万ダウンロードを突破。6月1日には400万ダウンロードを達成し、売上ランキングでもApp Store、Google Playの双方で20位以内に入る急成長ぶりを見せています。
IPタイトルが増加し人気を博すという傾向は、ソーシャルゲームでも市場が一定規模に拡大した時点で見られたものです。この事象は、ゲームアプリの市場拡大と競争の激化がそれだけ進んできた証ともいえるでしょう。

テレビCMの重要性の高まり

またプロモーションという意味でいうと、テレビCMの重要性が高まっていることも見逃せない変化です。事実、先の表に示したタイトルの大半は何らかのタイミングでテレビCM展開を実施していますし、現在上位100位以内に入っているアプリを見ても、その半数以上が何らかのタイミングでテレビCMを実施している状況です。
テレビCMなど「モンスターストライク」のプロモーション強化のため、増資を実施したミクシィのようなケースも生まれていることから、テレビCMの重要性の高まりは見逃せない傾向といえます。
特にApp Storeにおいては、昨年の8月頃より「トップ無料」のランキングにおいて、アプリの継続利用がランキングに大きく加味されるようアルゴリズムが変更されるなど、リワード広告などを用いてマーケット上の順位を急速に上げる、いわゆる“ブースト”施策が通用しにくくなってきています。そうしたマーケット側の変化も、テレビCMの増加には影響している部分があるかもしれません。

おわりに

こうしたことから、LINEのような集客の仕組みを持たない企業が知名度の低いオリジナルタイトルを展開する上では、短期間のうちに知名度を急速に高められるテレビCMの存在が非常に重要な意味を持つようになったといえます。
一方でこのことは、ゲームを成功させる上でも、プロモーションにかける資金が大きく影響するようになったことも同時に示しており、既に成果を得ている大手ベンダーがより有利になる傾向が、一層加速していると見て取ることもできるでしょう。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。
エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。