[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] “成熟の時代”に向け変化するアプリベンダーの攻め方

ABC ABC
2014/08/26 (Tue)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] “成熟の時代”に向け変化するアプリベンダーの攻め方

-はじめに-

スマートフォンの広まりと共に急成長してきたゲームアプリ市場ですが、ここ何回かの記事で触れてきた通り、市場は着実に成熟期へと向かっています。
成熟期に向かうにつれ、アプリベンダー間の戦略にも変化が見られるようになってきました。その大きな変化の1つが、大手同士の大規模な合従連衡が起きつつあることです。昨年、ソフトバンクとガンホー・オンライン・エンターテイメントが、フィンランドのsupercellを傘下に収めたことは記憶に新しいですが、今年も8月6日にLINEが、国内外でヒットした、「ブレイブフロンティア」のエイリムを子会社に持つgumiとの資本・業務提携に基本合意したと発表するなど、大きな動きを起こしています。

大手同士の合従連衡が見据える、「海外展開」

ここで注目されるのは、ガンホーとsupercell、LINEとgumi、いずれの提携も国内だけでなく、海外を意識した内容となっていることです。
実際ガンホーは、8月22日にソフトバンクに株式を譲渡するまで、supercellとのタイアップを通じて「パズル&ドラゴンズ」の海外展開を積極的に進めていました。またgumiは、LINEとの提携によってLINE向けのゲームを開発し、LINEを通じて海外にゲームを提供していくとしています。

海外展開を目指す理由

なぜ大手ベンダー同士が手を結び、海外に打って出ようという動きが増えているのでしょうか。
それは今後新興国などで市場が伸びてくることを見通し、世界的な競争が加速するのに備えてヒットタイトルと優秀な開発要員を確保したい狙いがあるためと見られます。
資金力のあるベンダーを中心として、海外進出による規模拡大を目指す動きは今後も積極的になされていくと考えられるでしょう。

進む、「ヒットタイトルを持つ企業同士の合従連衡」

図1

▲ソフトバンクとガンホーがsupercellを傘下に収め、LINEがgumiに出資するなど、ヒットタイトルを持つ企業同士の合従連衡が進んでいる

見逃すことのできないもう一つの要素 海外ベンダーの日本進出

一方で、海外ベンダーの日本進出も見逃すことのできない要素となっています。日本は現在、アプリマーケット市場規模で世界最大となっていることから、多くの海外メーカーが日本進出を目指して攻勢をかけているのです。
実際、ガンホーとの関係強化でsupercellが成功を収めたのに加え、「キャンディークラッシュ」などのCM展開によって、King.comも確固たる足場を築きつつあります。また、最近では、Com2uSが「サマナーズウォー:Sky Arena」でアプリマーケットの比較的上位に定着するなど、LINE関連以外で韓国ベンダーが成功する事例も出てきており、海外ベンダーが徐々にではありますが、日本市場に入り込んでいるのが分かります。

進む海外ベンダーの日本進出

嗜好性の違いなどから、従来、日本は海外ベンダーにとって、非常に攻略が難しい市場と言われてきました。
しかし最近では、海外での成功で得た資金を武器として、国内でのノウハウを獲得する海外企業が増えており、海外企業が大規模なテレビCMを展開して知名度を拡大させるケースも出てきています。
それだけに今後は、競合する国内ベンダーだけでなく、海外ベンダーの動向にも気を配る必要が出てきたといえるでしょう。

LINE以外での韓国系ベンダーの成功事例 ~Com2uSの「サマナーズウォー:Sky Arena」~

図2

▲8月19日時点のApp Storeのトップセールスランキングより。韓国Com2uSの「サマナーズウォー:Sky Arena」が30位前後に定着してきている

大手ベンダーの戦略に対して小規模ベンダーのとるべき戦略は?

このように、ヒットゲームを有し大手となったベンダーは、成熟期に備えて買収や提携などで体力を強化し、規模拡大を目指すべく、世界的なパワーゲームに打って出ようとしているのが分かります。しかし一方で、中小のベンダーなどは、そうした動きについていくのが難しく、また大規模ベンダーの競争の余波を受ける形で、市場攻略に向けて打つことができる手段も狭まってきているのが現状です。
そうした小規模のベンダーがとるべきは、やはり身の丈に合った戦術ということになるでしょう。無論、ヒットによる一発逆転のチャンスがない訳ではありませんが、その可能性は従来より大幅に低くなっています。それゆえ自身の得意な分野に絞って確固なファンを作り上げる、SNSよるバイラルを徹底することで広告費をかけずに集客するなどして、しっかり足元を固めながら次の市場変化のタイミングをうかがうのが最善策ということになるでしょう。

求められる「身の丈に合った戦術」

アプリマーケットが誰にでもフラットにチャンスが存在する市場であった時代は終わりを迎え、個人開発者は既に“冬の時代”を迎えて久しいと言われています。
企業体力が大きくものを言う成熟期に向かう今後は、ゲームアプリでビジネスができるプレーヤーがさらに減少すると考えられるだけに、ゲームアプリによるビジネスを継続するためには、自身の企業が持つ体力を考慮し、その身の丈にあった戦術が求められているといえるでしょう。

————–
執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。