[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]スマートフォンの“中”から“外”へと変化する ゲームアプリのプロモーション

ABC ABC
2014/08/05 (Tue)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]スマートフォンの“中”から“外”へと変化する ゲームアプリのプロモーション

-はじめに-

ゲームアプリを提供する上で、 ゲーム自体の面白さを追求することはもちろん重要ですが、 現在のゲームアプリ市場において重要になってきているのが プロモーション施策です
既に国内外合わせて多数のゲームアプリが提供されている中、 自身が提供するゲームアプリをユーザーに知ってもらい、 ダウンロードして継続的に利用してもらうためには、 アプリの存在をユーザーに知ってもらうことが重要となっているからです。
アプリをプロモーションする上で、従来非常に重視されてきたのが、 いかにランキングの上位にアプリをランクさせるかということでした。 ランキングはアプリマーケットにおいて、 多くの人がアプリの人気を計るバロメーターとして注目しやすいことから、 各社ともに、いかにランキングの上位にランクさせるかを重視した プロモーション施策をとってきたのです。

ランキング順位を大幅に上げる施策~ブースト施策~

それを象徴しているのが、 リワード広告を積極活用して一時的に 無料アプリランキングの順位を大幅に上げる、 いわゆる“ブースト”施策です。
従来、このブースト施策を用いた プロモーション手法が明確な成果へと結び付いていたことから、多くのゲームアプリベンダーが積極的に 活用してきました。 特にアプリの成否を大きく分ける初動時点で、 ブーストを使用するケースが多く見られたようです

図1

▲ゲームアプリのプロモーション施策に大きな影響を与えてきた、 App Storeのトップ無料ランキング

弱まる無料ランキング自体の影響力と、スマートフォンの外に広がる広告手法

現在でもブーストを実施しているアプリは少なからず存在するものの、 ブーストによるランキングの上昇が、売上ランキングの上昇につながる傾向は、 日を追う毎に減少しているように感じます。
その理由の1つとして、特にブーストの舞台となってきたApp Storeが、 リワードやブーストによるランキング変動の対策に 一層力を入れてきていることが上げられます。 ですが、より大きな要素として上げられるのが、 広告手法がスマートフォンの外にも広がっており、 マーケット全体における無料ランキング自体の影響力が弱まっていることです。

スマートフォンの外に広がる販促手法の事例(ファンイベントの実施)

図2

▲ガンホーは自社のゲームアプリなどに関するファンイベント「ガンホーフェスティバル」を開催し、プロモーションとファンの継続利用につなげています

強まる傾向 ~より幅広く、多面的な集客につなげる施策~

つまり、現在のゲームアプリのプロモーションは、 かつてのようにスマートフォンの中だけでは、 大幅な集客と継続利用につなげるのが難しくなってきており、 よりコストをかけてスマートフォンの外でも広告施策を打ち、より幅広く、 多面的に集客につなげる傾向が強くなってきているといえるでしょう。
そうした傾向は、ゲームの中の施策からも見えてきます。 例えば最近のゲームアプリの傾向として、 人気声優の起用を積極的にアピールするものが増えています
こうした取り組みは、単に質のよい声を導入するだけでなく、 スマートフォンのゲームに親しんでいるとは限らない声優、 あるいはそれに付随するコンテンツのファンに対して、 ゲームを訴求する狙いがあるともいえます。 原作のファンに訴求するIPを用いたタイトルの増加も 同様の傾向を示したものといえ、 アプリの制作・企画段階でプロモーションを意識した取り組みと、 コストを割く必要があることを端的に示す傾向といえるでしょう。

人気声優を起用したタイトルの例(AppStoreより)

図3

▲IPを起用したタイトルに加え、“豪華声優陣”の起用をアピールするタイトルも増えています

求められる企業体力、資金力 ~市場の成長から成熟へ~

無論、ゲームの広告・宣伝にどれだけコストをかけられるかには、 企業体力が大きく影響してきます。それだけに、今後はゲームの開発だけでなく、プロモーションのためにも企業体力、ひいては資金力が一層求められるでしょう。 そしてこのことは、既に先行している企業と後発の企業に 大きな差を生み出すことにもつながり、前回触れたゲームアプリのリッチ化と合わせて、市場が“成長”から“成熟”に向かう第一歩になるのではないかと、 筆者は見ています。

―――――――――――
執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。