[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 「白猫プロジェクト」が示すゲームアプリ市場の成熟化

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2014/08/12 (Tue)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 「白猫プロジェクト」が示すゲームアプリ市場の成熟化

-はじめに-

ここ2回でアプリのコア化・リッチ化、 そしてプロモーションの大規模化など、 急激な成長と共にスマートフォンのゲームアプリ市場を取り巻く環境が 大きく変化しており、 遠くないうちに成長から成熟のフェーズに移ると説明してきました。
そして最近、その傾向を象徴する出来事がありました。 それは、コロプラが7月に発表した「白猫プロジェクト」が、 好調を見せていることです。

好調を見せている、コロプラ「白猫プロジェクト」

図1

▲「白猫プロジェクト」のゲーム画面(プレスリリースより) (C) COLOPL, Inc.

従来の日本のスマホゲームトレンドとは異なる、白猫プロジェクト

白猫プロジェクトは独自の操作性を打ち出し、アクション要素を積極的に取り入れた内容となっており、プレイするには一定のまとまった時間を要求するなど、“いつでも遊んでいつでも止められる”ことを意識した日本のスマートフォンゲームのトレンドとは異なります
クイズというライトユーザーにアピールしやすい要素を取り入れ、スマートフォンでのプレイを意識した同社のヒットタイトル、「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」とは、方向性がかなり異なることから、その成否が注目されていました。

配信開始から好調なDL数推移と、白猫プロジェクトの特徴的な要素

しかし、白猫プロジェクトは、7月14日の配信開始当初より好調なダウンロードを記録。7月30日にはダウンロード数が200万を超えたほか、執筆時点(8月5日)ではApp Storeのトップセールスで9位、Google Playの売上トップでも14位となっており、当初から利用を大きく伸ばしていることが分かります。
そしてもう一つ。白猫プロジェクトの特徴的な要素として上げられるのが、サービス開始より早い段階で大規模なプロモーションを実施していることです。アプリの配信開始は7月14日ですが、そのおよそ半月後となる8月1日から、タレントの大島優子を起用したテレビCMを開始するなど、大規模なプロモーションを実施。これが功を奏してか、執筆時点のApp Storeにおけるトップ無料ランキングで1位となるなど、好調を維持しているようです。

配信開始後、早い段階での大規模プロモーション

ゲームアプリのテレビCM展開は従来、アプリの配信後にブレイクして人気をある程度確立した後、一層のユーザー拡大を狙うために実施するのが定石であり、アプリ配信後数か月~1年程度経ってからCM展開するケースがほとんどでした。
しかし白猫プロジェクトは、初期段階より人気を獲得していたとはいえ、配信後1ヵ月以内とかなり早い段階でCMを実施。当初より大規模なプロモーションを計画していたと見られます。

コロプラ、主要タイトルにおけるテレビCM開始までの日数比較

図2

▲コロプラの主要タイトルにおける、配信開始からテレビCM開始までの日数(同社プレスリリースを元に作成)

白猫プロジェクトにみる、ヒットを生み出すための計画

ゲーム内容をより“ゲームらしい”内容に近づけたこと。そして当初より大規模なプロモーションを計画に組み込んでいたこと。こうした白猫プロジェクトの取り組みを見るに、スマートフォンでもヒットゲームを“偶然”ではなく、“必然”から生み出しているのが分かります。
これまで筆者がヒットしたスマートフォンゲームのメーカーを取材した際、必ずと言っていいほど、「ヒットした理由はよく分からない。タイミングがよかっただけ」という声を耳にしてきました。これは、アプリマーケット、ひいてはスマートフォンが拡大期にあり、スマートフォンならではの新しい刺激を求めるユーザーが多くいたことから、ユーザーの刺激を満たす何らかの要素と、一定の品質を担保することが、ヒットに求められる条件だったといえます。逆に言えば、その条件を偶発的にでも満たすことができれば、誰にでもチャンスがあったといえるでしょう。

読みやすくなった、ヒットを得るための傾向

しかし、既に多くの人がスマートフォンを手にし、多数の良質なアプリがマーケット上に存在する昨今では、そうした偶発的なヒットを生み出すのは難しくなりつつあります。むしろいかにゲームを遊ぶ人達の嗜好、例えばグラフィックの表現や工夫、キャラクターの特徴、ストーリーの面白さなどを意識した方が成功を収めやすくなってきているようです。このことは、特に小さい企業にとってチャンスの幅が狭まった一方で、ヒットを得るには何が必要かを“読みやすく”なったともいえるかもしれません。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。