[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 「パズドラW」とアジアシフトで市場変化に備える ガンホー・オンライン・エンターテイメント

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2014/09/03 (Wed)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 「パズドラW」とアジアシフトで市場変化に備える ガンホー・オンライン・エンターテイメント

-はじめに-

今回より数回にわたって、スマートフォンのゲームアプリで高い人気を獲得しているベンダー1社をピックアップし、最近の動向から各社の強みや課題、今後に向けた動向などを
分析していきたいと思います。まずは、ゲームアプリ市場において最も大きな存在感を発揮している、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)の動向を分析していきましょう。

ガンホーの成長を支える「パズル&ドラゴンズ」

ガンホーの成長を支える主力タイトルは、「パズル&ドラゴンズ」(以下、パズドラ)で、2012年の提供開始以降爆発的な人気を獲得。同社の売上規模を当時の10倍以上、利益に至っては100倍以上にも高めています。またガンホーはパズドラブランドの価値を高めるべく、コンテンツの横展開を積極化。昨年はニンテンドーDS向けに「パズドラZ」を発売して、
100万本を超えるセールスを達成、小学生からの人気を獲得するなど順調に支持を広げています。

市場の成熟とともに、ガンホーに起きている「変化」

ですが、ゲームアプリの市場が成熟フェーズに入ると共に、同社の成長にも変化が出てきているようです。そのことを示している要素の1つが売上で、2014年第2四半期には、同年第1四半期より売上高で約11%、営業利益で約14%減少。市場が成熟に向かう中での売上減少は気になるところです。

図1

▲ガンホーの四半期決算推移(2014年12月期 第2四半期決算説明会資料より)

ガンホーが抱える「不安要素」

また最近では、App Storeのトップセールスランキングにて、ミクシィの「モンスターストライク」に一時的ながらも首位を譲るケースが増えているのも、不安要素といえます。ガンホーはパズドラの他に、経常的に各マーケットの売上ランキングトップ20位に入る規模のタイトルを持たないことから、今後の競争激化を考えると、パズドラ以外の大きな“柱”を持たないことが、同社の弱みとなってくるかもしれません。

ライトユーザーに向けた「パズドラW」へのアップデート

無論、ガンホー側も、そうした変化に向け早急に手を打っています。競争力を高めるユーザー層の拡大という意味でいうと、ライトユーザーが楽しみやすい新しいゲームモードを追加した「パズドラW」へのアップデート(7月29日)は、非常に大きな変化であったといえます。時をほぼ同じくして、人気アイドルグループの「嵐」を起用したテレビCMを実施している点からも、従来のパズドラファンとは異なる層を確保したい狙いを見て取ることができるでしょう。

図2

▲ライトユーザーに向け、パズル部分を楽しめるようにした「パズドラW」(2月20日に開催された「パズドラ2周年記念超絶発表会」より。ゲーム画面は開発中のもの)

従来にはない新しい動きと海外に向けた取り組み

また新タイトルの創出という面では、6月30日に配信を開始したばかりの「ピコットキングダム」のテレビCMを、8月9日より開始。マーケティング重視でユーザーの積極的な獲得に動くなど、従来にはなかった新しい動きも見せています。そしてガンホーの最近の動向を見る上で、忘れてはならないのが、海外に向けた取り組みです。ガンホーは近年、パズドラの海外展開に力を入れており、2013年にはソフトバンクと共同でフィンランドのsupercellを買収。同社のゲームとの共同プロモーションにより、欧米を中心にパズドラの海外展開を図ってきました。

supersellの株式譲渡とその理由

ですが今年の8月21日、ガンホーはsupercellの株式をソフトバンクに譲渡。その理由についてガンホーは、共同プロモーションの成果が「目標としている規模に到達していない」と説明しており、共同プロモーションの成果が想定を下回っていたことを示しています。イベントなどの運用面を重視するガンホーと、1つのスタイルのゲームをグローバルに横展開するsupercellとでは提供するゲームの方針も異なっていたことから、マーケティング面でのメリットが得られない以上、株式を保有していてもシナジーが得られないとの判断に至ったといえそうです。

図3

▲昨年10月のソフトバンク決算発表会より。ガンホーはソフトバンクと共同でsupercellの買収に至ったが、マーケティング面でのシナジーが目標に達せず、株式譲渡に至った

ガンホーの施策変化 ~中国や東南アジア、南米などに力を入れる構え~

その一方で、ガンホーは同じ8月21日に、シンガポールにGungHo Online Entertainment Asia Pacificを設立。中国や東南アジア、南米などに力を入れていく構えを見せています。この方針の変更には、今年1月に配信を開始した香港と台湾で高い人気を獲得し、利用者が急伸したことが影響したと考えられるでしょう。日本と嗜好が近くシナジーが得やすいアジア圏と、今後成長が見込まれる新興国への注力が、海外での成長につながると判断したと見ることができます。

市場の変化を見据えたガンホーの施策変化

こうしてみると、今後顕著に現れてくるであろう市場の変化を見据え、ガンホーは国内と海外、それぞれの市場に向けた施策をドラスティックに変化させているのが分かります。そうした大幅な施策変更の成否が、同社の今後の成長を大きく左右するといえそうです。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。