[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]選択と集中で新たなユーザー開拓を狙うLINE GAME

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2014/09/30 (Tue)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]選択と集中で新たなユーザー開拓を狙うLINE GAME

-はじめに-

9月より、スマートフォンのゲームアプリで高い人気を獲得しているベンダー1社をピックアップし、最近の動向から各社の強みや課題、今後に向けた動向などを分析しています。第3回は、自らゲーム開発を手掛けている訳ではないものの、スマートフォンゲーム市場で非常に大きな存在感を示している「LINE」を取り上げ、動向を分析していきます。

世界の主要ゲームパブリッシャーの1つになりつつあるLINE

自らゲーム開発を手掛けている訳ではありませんが、スマートフォンゲーム市場で非常に大きな存在感を示しているのがLINEです。LINEは2012年にパズルゲーム「LINE Birzzle」を提供して以降、ゲーム事業に力を入れるようになり、現在では世界の主要ゲームパブリッシャーの1つとなるに至っています。

LINEのゲーム事業の特徴

LINEのゲーム事業の特徴は、先にも触れた通りゲームを自社で開発するのではなく、メッセージアプリ「LINE」と連携できる「LINE GAME」というプラットフォームを提供し、その上でさまざまなゲームを流通させている点にあります。 とはいえ、アプリは実質的にApp StoreやGoogle Playで配信されていることから、プラットフォーマーというよりパブリッシャーに近い位置付けといえるでしょう。

LINE GAMEの強み

そしてLINE GAMEの強みは、やはりLINEと連携できる点にあります。LINEの友人同士でスコアを競い合ったり、ゲームのプレイに必要なアイテムを送り合ったりできる仕組みと、そうした仕組みに見合った、短時間でプレイできるカジュアルゲームを多く提供したこと。それがLINEのゲームの人気を高め、売上にも大きく貢献しています。

資料:LINEの業績推移

図1

▲LINEの業績推移。 毎年右肩上がりの成長を続けている主因はゲームで、ゲームによる課金は売上の約60%を占める

LINEの影響力や特性を活かしたゲーム事業の展開

そうしたLINEならではの特性を活かし、LINEは多くのゲームを提供して人気を獲得してきました。「LINE POP」「LINE: ディズーニー ツムツム」などのオリジナルタイトルだけでなく、「LINE ポコパン」「LINE クッキーラン」など、サードパーティー製のゲームにもいくつかのヒットタイトルが生まれている点は注目に値するでしょう。 日本を中心に、海外でも利用が広まっているLINEの影響力を活かして、ゲーム事業を大きく伸ばしているのが分かります。

LINEの狙い ~選択と集中~

カジュアルゲームを主体にユーザー数を大きく伸ばしてきたLINE GAMEですが、最近はその戦略に大きな変化が見られます。それを象徴しているのが、今年の6月2日に提供しているゲームのうち20タイトルを終了すると発表したことです。LINEがこれまで提供してきたゲームは、(既に配信終了したものも含めて)50以上に上っており、タイトル毎の好不調が激しくなっていました。そこで収益性が低いタイトルを一気に終了させることで、収益性の高いヒットタイトルに誘導しやすくしつつ、リソースを集中したいというのがLINEの狙いのようです。

LINEの転換 ~量から質へ~

そしてこのことは、LINEがゲームの“量”から“質”を重視する方向に転換したことを意味しています。LINE GAMEはこれまでタイトル数を増やすことで認知度を高めてきましたが、マーケット動向の変化に加え、ユーザーに好まれるゲームの傾向などがある程度見えてきたことから、今後は投入本数もある程度絞り込み、選択と集中に向かうと見られます。

ゲーム事業への注力

次に大きな動きとなるのが、8月6日にゲームの海外展開を見据えたファンドを開設して、100億円規模の投資を実施するほか、gumiとの資本・業務提携に基本合意したと発表したことです。この動きからは、海外での事業規模拡大はもちろんですが、それ以上にLINEが一層ゲーム事業に力を入れる方針を見せたことが分かります。 ゲームはLINEの収益の柱となっているだけに、カジュアルゲームにとどまらないゲームを、日本だけでなくさまざまな国で展開し、 売上を高めたい狙いがあるといえそうです。

図2

▲LINEはファンドを設立したり、gumiと提携するなどして、ゲーム事業の拡大に力を入れている

3DアクションRPG 「LINE レヴァナンゲート」の配信開始

そしてもう1つ。9月25日より「LINE レヴァナントゲート」の配信を開始したことも、LINE GAMEの大きなターンニングポイントといえます。これは、従来のLINE GAMEで提供されてきたカジュアル要素が強いゲームとは大きく異なり、じっくり腰を据えてプレイする、本格的な3DアクションRPGとなっています。こうしたゲームをLINEが流通させるという判断をしたことは、やはり国内のスマートフォンのゲーム市場が成熟に向かう中、今後の成長を得る上ではコアなゲームプレーヤーの獲得が重要と見た証といえるのではないでしょうか。

図3

▲9月25日に提供開始した「LINE レヴァナントゲート」。3DアクションRPGと、従来のカジュアルゲームとは一線を画す内容となっている。 写真はプレスリリースより (C)NHN PlayArt Corp

LINEの新しい戦略の是非

これら最近の動きを総合すると、LINEが従来以上にゲームの“質”を重視し、さらにゲームのコア層に受け入れられるタイトルを提供することで、カジュアルにとどまらない広い顧客層を獲得し、売上の拡大につなげようとしていることが分かります。とはいえ、カジュアルゲームと本格ゲームとではユーザー層が大きく異なるだけに、双方をうまく取り込んで消化できるかに、LINEの新しい戦略の是非がかかってくるといえそうです。

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執筆者紹介 佐野 正弘(さの まさひろ)
モバイルジャーナリスト
福島県出身、東北工業大学卒。

エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体 「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。