[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]「ラブライブ!」を中心に IPの強みを活かして業績を拡大するKLab

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2015/01/15 (Thu)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]「ラブライブ!」を中心に IPの強みを活かして業績を拡大するKLab

-はじめに-

2015年がスタートしました。本年もスマートフォンゲームアプリの動向をさまざまな切り口から捉えたマーケティングレポートをお送りしてまいります。今回のマーケティングレポートでは、昨年に続き、ベンダーピックアップをお送りいたします。
スマートフォンのゲームアプリに力を入れる企業の中には、ソーシャルゲームが急速に広まって以降、ゲーム事業に注力した企業も少なくありませんが、成功を得ている企業は必ずしも多い訳ではありません。ですが、そうした中にあって、大きな成功を収めている企業の1つにKlabがあげられます。
第7回目は、KLabをPICK UPします。

ソーシャルゲーム市場の拡大後にゲーム事業に参入

スマートフォンのゲームアプリに力を入れる企業の中には、ソーシャルゲームの市場が急速な拡大を見せて以降、ゲーム事業に注力した企業も少なくありませんが、成功を得ている企業は必ずしも多い訳ではありません。
ですがそうした中にあって、大きな成功を収めている企業の1つに、KLabが上げられます。

モバイル向けのソーシャルゲームでヒットタイトルを生み出し、急成長

KLabはサイバードの研究開発部門が前身であり、元々はiモードなど携帯電話向けのコンテンツやシステム開発などを手掛けてきました。
ですがモバイルでのソーシャルゲーム人気を受ける形で、2009年にソーシャルゲームを企画・制作する、「KLabGames」を設立。「恋してキャバ嬢」「戦国バスター」など、多くのヒットタイトルを生み出して急成長を遂げ、2011年には東証マザーズへ上場を果たし、2012年には東証1部へと史上最短で市場変更したことで、大きな話題となりました。

2014年には事業全体をアプリベースへ大きくシフト

ソーシャルゲームで順調に業績を伸ばしてきたKLabですが、やはりその後のソーシャルゲームの市場縮小、スマートフォンゲームの急拡大という波で苦しむこととなります。
アプリマーケットにおいても、当初は「真・戦国バスター」「Lord of the Dragons」などで、国内外での存在感を示していましたが、ブラウザベースのハイブリッド型から、純粋なネイティブアプリへとシフトが鮮明になると共に、競争環境が厳しくなり、2012~2013年頃は、不振・停滞が続いたといえます。

ラブライブ!の大ヒットが同社の業績に大きく貢献

ですが、2012年9月に業務提携した、ブシロードの「ブシモ」にて、2013年4月に配信を開始した、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(以下、スクフェス)がヒット。
App Store、Google Playの売上ランキング上位に、頻繁に顔を出す存在となったのに加え、2014年12月には1000万ダウンロードを記録。
さらに2014年11月には、同タイトルのヒットなどによって、2014年第3四半期の業績を上方修正するなど、業績に大きく貢献するタイトルへと成長させています。

図1

▲KLabの主力タイトル「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(画像はプレスリリースより)。世界観を活かした音楽ゲームに仕上げ、ファンからの支持を獲得した
(C)2013 プロジェクトラブライブ! (C)KLabGames (C)bushiroad All Rights Reserved

Klabの強み~IP(知的財産)を活かしたタイトル活用~

KLabの強みは、スクフェスが示すように、IP(知的財産)を活かしたタイトルの活用にあるといえます。同社はソーシャルゲームの頃より、「キャプテン翼」や「幽☆遊☆白書」などの、IPを用いたタイトルを、多くヒットへと導いています。
有力なIPをいち早く獲得するだけでなく、それをうまくゲームに落とし込み、継続的に熱心なファンを獲得する。そうしたノウハウがスマートフォンのゲームアプリにおいても有効に働いており、スクフェスや、バンダイナムコゲームスとの共同開発タイトル「テイルズ オブ アスタリア」などのヒットに結び付いたといえるでしょう。

同社の課題、オリジナルタイトルでのヒット獲得

一方で同社の課題となっているのは、ネイティブアプリでのオリジナルタイトルにおける、ヒットの獲得です。
IPへの依存度が高いことは、IPの人気にゲームの人気が大きく左右されることも同時に意味しており、特にスクフェスのような比較的新しいIPの場合、継続的に安定的なユーザーを確保できるかという点には不安もあるからです。

安定したヒットを生み出す体制確立にはまだ課題がある

KLabのオリジナルタイトルとしては、2014年2月に配信開始した、「天空のクラフトフリート」がマーケットで徐々に人気を高め、テレビCM展開にも至っているほか、2014年11月配信の「クリスタルファンタジア」も、比較的好調な出足を見せています。
ですが、一方で、2014年6月にApp Storeで配信を開始した、「かぶりん!」が伸び悩み、Android向けの開発を中止するなど、安定してヒットを生み出す体制を確立するには、まだ課題があるといえます。

図2

▲2014年2月に配信開始した「天空のクラフトフリート」(画像はプレスリリースより)。
徐々に売上ランキングでの順位を上げてきており、テレビCM展開にも至っている。 (C)KLabGames

もうひとつの課題、海外展開

また、今後に向けた課題となるのが海外展開です。
現在KLabは、主力タイトルとなるスクフェスを、アジア圏主体に展開することで、海外での売上比率を伸ばしつつあります。
ですが2013年6月にマイクロソフトとライセンス契約を結び、開発を進めている、海外で人気の高い「Age of Empires」の、最新タイトル「Age of Empires: World Domination」の配信が2015年に延期となるなど、不安材料もいくつか見られます。

図3

▲マイクロソフトからライセンスを得て開発を進めている「Age of Empires: World Domination」(画像はプレスリリースより)。2014年夏の配信予定であったのが、2015年に延期されている

タイトルの開発・配信をいかにスムーズにできるか

2015年は米国で人気のドラマ「glee」のライセンスを用いたゲームの配信も控えているだけに、タイトルの開発・配信をスムーズにできるかも、ビジネスの成否を大きく左右するといえそうです。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト 福島県出身、東北工業大学卒。
エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。