[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]ネイティブアプリのヒットと任天堂との提携でIPに注力するDeNA

absuke absuke
2015/03/30 (Mon)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]ネイティブアプリのヒットと任天堂との提携でIPに注力するDeNA

-はじめに-

3月17日、スマートフォンのみならず、ゲーム業界に全体にも大きく影響する、驚きの発表がなされました。
それは、任天堂が、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)と資本・業務提携を結び、「マリオ」など任天堂のIP(知的財産)を
活用したスマートフォンゲームを提供すると発表したことです。

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▲DeNAは3月17日、任天堂と資本・業務提携を実施したことで大きな驚きを与えた

そこで今回は、任天堂との提携を発表したDeNAの、最近までのスマートフォンゲームに関する戦略を追いながら、
任天堂との提携を獲得できた要因について考えていきたいと思います。

DeNAのゲームビジネス参戦は2006年のモバゲータウンから

元々「ビッダーズ」(現・DeNAショッピング)など、ECサービスを主体のビジネスを展開してきたDeNAが
ゲームビジネスに参入したのは、2006年に開始した携帯電話向けのSNSサービス「モバゲータウン」
(現・Mobage)からとなります。

特に2009年には、Mobage上で提供したソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」のヒットや、
Mobageのプラットフォームのオープン化によって、グリーと並ぶモバイルブラウザゲームプラットフォームの一角を
占めて急成長。米ngmocoを買収し海外進出を図るなど、ビジネスの拡大を進めてきました。

DeNAのブラウザゲームを中心にハイブリッド型を中心としたゲーム展開

スマートフォンが台頭して以降も、ブラウザゲームを主体としたゲームの人気が継続していたことから、
同社はブラウザゲームを中心に、ハイブリッド型を主体としたゲームへの注力を継続。
その戦略は国内外で大きな成果を上げてきました。

実際、CygamesがMobage上で展開してきた「神撃のバハムート」を、
海外向けにも「Rage of Bahamut」として配信し、2012年には米国のGoogle PlayやApp Storeで
売上ランキング1位を記録。さらに海外先行で配信された「Blood Brothers」も
多くの地域で売上ランキング1位を獲得するなど、
日本だけでなく海外でも大きな成果を収めるに至っています。

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▲米国で売上ランキング1位を記録した「Blood Brothers」のキービジュアル(画像はプレスリリースより)。
今年には続編の「Blood Brothers 2」が海外で配信されている

複数の要因による、DeNAのゲームビジネスの急速な落ち込み

ですが、アプリマーケットの方針によってハイブリッド型ゲームの配信ハードルが大きく上がったことに加え、
2012年の中頃からネイティブゲームが急速に台頭してきたこと、
そして、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが急加速したことで、
Mobageプラットフォームの利用が大幅に減少したことなどから、
この頃よりDeNAのゲームビジネスは急速な落ち込みを見せることとなります。

新規事業の模索を進めながら、続く試行錯誤

そうした市場変化を受け、DeNAは2013年以降、ブラウザゲームからネイティブゲームへと舵を切り、
「パズ億」「進撃の巨人 -自由への咆哮-」などのネイティブゲームタイトルを投入。
積極的なテレビCMも実施しましたが、ヒットの獲得には至りませんでした。

その間同社は「SHOWROOM」「マンガボックス」など、ゲーム以外の新事業の模索も進めており、
2年近くの間、業績を大きく落としながらの試行錯誤が続いたといえます。

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▲2013年12月に配信された「パズ億 ~世界一周編~」。
大規模なプロモーションも実施されたが、ヒットを獲得するには至っていない(写真は同社プレスリリースより)
(C)DeNA Co., Ltd.

見える、市場でのヒットの兆し

ですが、2014年9月に配信開始した、スクウェア・エニックスとの協業タイトル
「ファイナルファンタジーレコードキーパー」で、
ついにネイティブ市場でもヒットを獲得するに至りました。

加えてMobageプラットフォームでも「グランブルーファンタジー」(Cygames)など、
ヒットタイトルが登場したことで消費が下げ止まり、
最近はゲーム事業全体でも業績の底打ち感が見えてきたようです。

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▲DeNAの2014年度 第3四半期決算説明会資料より。ネイティブ・ブラウザゲーム共に
ヒットが生まれたこともあり、下落し続けた業績の下げ止まりが見えてきた

IPの重要性を認識する契機となる、FFRKのヒット

そしてファイナルファンタジーレコードキーパーのヒットが、
DeNAにとってもIPの重要性を認識する大きなきっかけになったことは確かでしょう。

海外でも「MARVEL War of Heroes」「NBA夢之隊」など
IPを活用したタイトルが同社の主力となっており、
人気のIPに自社の技術やノウハウを組み合わせることが、ヒットへと結び付けやすいと判断。
こうしたIP重視の方向性が、最終的に任天堂との交渉をまとめ、
提携に結び付く要因になったといえそうです。

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▲DeNAとスクウェア・エニックスとの協業タイトルとしてヒットを獲得した
「ファイナルファンタジー レコードキーパー」。
IPの重要性を認識させたタイトルともいえる(画像はプレスリリースより)
(C)SQUARE ENIX CO., LTD. (C)DeNA Co., Ltd.

注目される、任天堂との提携

実際、今回の任天堂との提携においても、発表内容を見る限りDeNA側は、主にサーバー運用など
“黒子”の役割を担うことが多いと見られています。
こうした点からも、IP主体のビジネスに舵を切るという、同社の方針が見えてきたといえます。

なお今回の提携では、スマートフォンゲームだけでなく
「クラブニンテンドー」に代わる新しい会員基盤を構築することも視野に入っているとのこと。
両社のタッグがスマートフォンだけでなく、ゲーム市場全体にどのような変化をもたらすのか、
注目されるところではないでしょうか。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト 福島県出身、東北工業大学卒。
エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。