[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]上場各社の決算から今後を読む~DeNAとグリーの“底”は見えたのか~

absuke absuke
2015/06/05 (Fri)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向]上場各社の決算から今後を読む~DeNAとグリーの“底”は見えたのか~

-はじめに-

4月下旬から5月前半にかけて、相次いで上場各社の決算発表がされました。
そこで、前回に引き続き、モバイルゲーム関連各社の決算内容から、
主要企業及び主要ゲームタイトルの動向について、ピックアップして確認してみたいと思います。
今回は長期低迷が続くディー・エヌ・エー(DeNA)とグリーの決算を比較し、両社が置かれている現在の状況と今後の課題を確認してみましょう。

プラウザゲームのプラットフォームとして一世を風靡した2社

DeNAとグリーは、共にフィーチャーフォンからスタートした、「Mobage」「GREE」で、
モバイル向けのブラウザゲームプラットフォームとして一世を風靡しました。
ですが、スマートフォンの広まりと共にネイティブアプリへのシフトが進み、
ブラウザプラットフォームからのユーザー離れが起きて急速に業績を悪化させているという点で共通しています。

グリーとDeNA、現在の足元の状況は?

では、足元の状況はどのようになっているのでしょうか。

4月28日に発表されたグリーの、2015年6月期第3四半期連結決算は、
売上高が前四半期比21.3%減の220億円、営業利益は1.8%増の49億円となっています。

一方、5月12日に発表されたDeNAの2014年第4四半期連結決算は、
売上高が前四半期比5%増の361億円、営業利益が11%減の46億円となっています。

ある程度歯止めがかかりつつある両社の業績悪化

DeNAが2014年度通期で、売上高、営業利益共に2桁の減少を続けているように、
通期業績で見ると両社は今なお厳しい状況にあることは確かです。

ですがグリーが前期比で利益が、DeNAが売上がプラスになっていることから、
2年近く続いている急速な業績の悪化にある程度歯止めがかかりつつあるようにも見えます。

決算内容にみる、両社業績回復要因の違い

しかしながら決算内容を見比べると、両社の業績回復要因には違いが見られます。
DeNAはソーシャルメディア事業、特に中国でのゲーム事業の成長がけん引しているのに対し、
グリーはコストコントロールの徹底、中でも広告宣伝費の抑制が大きく影響しているようです。

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▲DeNAは今期、中国市場のゲームの売上向上がけん引したことから、前期比で売上を拡大させている(決算発表会資料より)

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▲グリーは売上の減少を広告費の抑制でカバーする形で、利益を増加させている(決算発表会資料より)

コイン消費に見る、DeNAのゲーム事業回復傾向

主力のゲーム事業の業績推移にも違いが見られます。
両社のゲーム事業におけるコイン消費を見ると、DeNAは今期の国内コイン消費量が370億円と、
年間を通して370億前後の横ばい傾向となっているほか、海外は68億円と中国を主体に大きく伸びるなどして、
ゲーム事業の売上が回復基調にあることを見て取ることができます。

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▲DeNAの国内コイン消費の推移。前期よりやや下がっているものの、通期で見ると横ばい傾向となっている(決算説明会資料より)

グリーの国内コイン消費量にみる、ゲーム事業落ち込みの継続

一方グリーのコイン消費を見ると、今期の国内外消費量は313億コインと、
第1四半期(363億コイン)と比べても右肩下がりの傾向が続いています。
今なおゲーム事業の落ち込み傾向が続いていることが理解できるでしょう。

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▲グリーの国内外におけるコイン消費の推移。現在も右肩下がり傾向が続いている(決算説明会資料より)

業績を大きく分けた、ヒットタイトルの有無

ゲーム事業で両社の業績を大きく分けているのは、やはりヒットタイトルの有無と考えられます。
DeNAは「ファイナルファンタジーレコードキーパー」で、ネイティブゲームで上位を争えるヒットタイトルを確保。
さらにブラウザゲームにおいても、ネイティブゲームとしてもヒットしている、
Cygamesの「グランブルーファンタジー」の人気や、バンダイナムコゲームスの人気タイトル、
「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアニメ化など
好材料が多かったことが、業績回復に大きく影響したといえます。

他ゲームの落ち込みを主要タイトルでカバーしきれていないグリー

一方グリーは、Wright Flyer Studiosの「消滅都市」が人気を獲得しているものの、
各アプリマーケットのランキングでも上位10位を狙う位置にはまだ達しておらず、
同社の存在感を大きく押し上げるには至っていません。
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ブラウザゲームにおいても、gloopsの「スカイロック」や
グリフォンの「ミリオンアーサー エクスタシス」などが人気を高めていますが、
他のゲームの落ち込みを支えて
プラットフォーム全体を押し上げるには弱いという印象です。

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▲グリーは消滅都市の伸びが著しいが、ヒットタイトルとしてはミドルクラスの規模だけに、
より大きな押し上げ効果が求められるところだ(決算発表会資料より)

両社とも、業績回復にはさらなる一手が求められている

こうしたことから、DeNAはヒットの獲得である程度業績の底が見えてきたといえますが、
グリーはまだ大きなヒットを得るには至っておらず、
底が見えていないと見ることができそうです。

もっとも両社とも、今後もブラウザプラットフォームの落ち込みが続くと考えられるだけに、
業績回復にはさらなる一手が求められているのは、言う間でもありません。

ゲーム事業以外では、両社ともライフスタイル系の事業に力を入れて多角化を進める方針を見せていますが、
ゲーム事業における両社の次の一手は、どのようなものになるでしょうか。

任天堂との提携。第1弾のタイトルが業績の成否を左右する

ヒットを獲得したDeNAの次の戦略として
明確に見えているのは、やはり任天堂との提携です。

この提携による協業は長期的なものですが、
両社まず年内に、第1弾のゲームを配信するとしています。
任天堂という大きなブランドとIPを背負うだけに、
最初のゲームが大きな成果を生むか否かが、
同社の短期的な業績と評価を大きく左右することになると
いえるでしょう。

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▲DeNAは任天堂との資本提供で、年内に1タイトル投入を目指すとしている(決算説明会資料より)

任天堂との提携。第1弾のタイトルが業績の成否を左右する

一方グリーに関しては、消滅都市の価値を最大化する取り組みを進める共に、
ヒットタイトルを生み出すための継続的なタイトル投入が求められるところです。
この点に関して、グリーは国内のネイティブゲーム開発人員数を600人、ライン数を20と
それぞれ倍に拡充したとしてています。それだけに、今後は拡充したラインをいかに活用し、
ヒットを生み出していけるかが注目されるところです。
▲グリーは国内のネイティブゲーム開発に人員を600人投入。
ライン数20本を揃えてヒットの創出に挑むとしている(決算説明会資料より)

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト 福島県出身、東北工業大学卒。
エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が読み解く スマホアプリマーケット傾向と対策(日経BP社)」 「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。


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