[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 2015年前半を振り返る~大規模プロモーションの変化に見る市場の成熟化~

absuke absuke
2015/07/28 (Tue)
スマホゲーム集客


[佐野正弘のスマホゲーム業界動向] 2015年前半を振り返る~大規模プロモーションの変化に見る市場の成熟化~

-はじめに-

今回も、前回同様2015年前半の動向を振り返ると共に、後半以降の動向を探ってみたいと思います。
今回は、各社が展開する大規模プロモーションの変化から見えてくる今後の変化を確認していきましょう。

プロモーションとして定着し注目を集めたテレビCM

まずは、近年スマートフォンゲームのプロモーションとして定着し、大きな注目を集めるようになったテレビCMに関して確認していきましょう。
テレビCMは大きなコストがかかる一方で、非常に大きな集客効果が見込めることから、
昨年は大小さまざまな企業が、キー局を主体にテレビCMを展開してきました。

テレビCMを大量出稿するケースは減少の兆し

ですが最近の傾向を見ると、キー局で積極的にテレビCMを展開しているのは、
企業体力のある大手企業に比較的絞られている印象を受けます。
新たに大規模なテレビCM展開を実施して注目されているのは、海外で大きな売上を上げている、
「ゲーム・オブ・ウォー – Fire Age」の米Machine Zoneなどに限られ、
昨年のように多くの企業がキー局でテレビCMを大量出稿するケースは減少傾向にあると見られます。
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▲米Machine Zoneは、俳優の伊勢谷友介さんを起用した「ゲーム・オブ・ウォー – Fire Age」のテレビCMを全国で大規模に展開している
(画像はプレスリリースより)

深夜帯でのテレビCM展開は増加の傾向

一方で増えていると感じるのが、キー局や大都市圏の独立局における、深夜帯でのテレビCM展開です。
深夜帯はテレビCMの料金が安いというのもあるでしょうが、より大きいのは、
都市部では深夜帯にアニメが多く放映されていることにあると考えられます。
深夜帯でCM展開しているゲームは比較的コア寄りのものが多いことから、
アニメを楽しむコアなゲームファンへの訴求を進め、確実なユーザーの獲得に繋げる傾向が高まっているといえそうです。

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▲ドリコムの子会社であるグリモアが提供する「ブレイブソード×ブレイズソウル」は、
東京のローカル局であるTOKYO MXの深夜枠に限定したCMを実施している(画像はプレスリリースより)

今後テレビCMの展開は減少か

昨年とCMの傾向が大きく変わりつつあるのは、市場の飽和が近づき競争が激化している影響から、
テレビCMにコストを割いても、それに見合った流入と売上が得られないケースが増えているためと考えられます。
それゆえ今後、テレビCMを展開する企業やゲームのバリエーションは減少していくと考えられそうです。

一方で、イベント実施する傾向が高まっている

また今年は、大手スマートフォンゲームベンダーが、ゲームのプロモーションをする上で、
イベントを実施する傾向が高まっているというのも大きな変化だといえます。
従来、単独で大規模なイベントを展開していたのは、ガンホー・オンライン・エンタテイメントくらいでしたが、
今年は「モンスターストライク」のヒットを受け、ミクシィも8月に単独でイベントを実施するとしています。
また小規模なものであれば、コロプラが猫を題材としたゲームとのコラボレーションイベント
「ねこまつりカフェ」なども実施されています。

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▲今年の1月には、コロプラが吉祥寺で、猫を題材としたゲームをテーマにした「ねこまつりカフェ」を展開。
7月からは大阪でも実施される

増加が予想される「東京ゲームショウ2015」への出展

今年2月の「闘会議2015」に、従来イベント参加に積極的でなかったスマートフォンゲームベンダー大手がこぞって参加したというのも、大きな変化といえるでしょう。
また、これまでスマートフォンゲームとの親和性はあまり高くないとされてきた
「東京ゲームショウ2015」においても、長年出展を続けてきたグリーに加え、CygamesやSupercellなど、スマートフォンゲームで急成長した国内外の企業が参加することが公表されており、
従来にない変化を感じ取ることができます。

既存ファンをより強固にし、1人当たりの売上上昇へ

イベント展開に積極的に取り組む企業が増えているのは、
既に多くのユーザーを獲得しているスマートフォンゲームが新規獲得よりも継続性を重視するようになったことの表れといえます。
市場飽和が進む中で売上を上げるには、新規のユーザー数を増やすよりも、既に抱えているファンをより強固にし1人当たりの売上を高める、あるいは継続的な売上を得る方が効果的といえます。
それだけに、リアルイベントの実施でユーザーとの接点を増やし、ファン層を繋ぎ止める方向に舵を切っていると見ることができるのではないでしょうか。

攻めから守りのプロモーションに戦略の変更へ

そうした大規模プロモーションの傾向から見えてくるのは、
やはり市場飽和によって、ヒットタイトルを持つ大手とそれ以外の企業との体力差が大きく出てきていること。
それによって特に大手のゲームアプリが、従来の攻めのプロモーションから守りのプロモーションへと戦略を変えつつあることです。

娯楽のライバルが増え、企業淘汰も!?

最近ではそうした大手のゲームアプリが守りを固めつつあるのに加え、
「AWA」「LINE MUSIC」などの音楽系アプリが注目を集めるなどゲーム以外からも娯楽のライバルが生まれ、ゲームとコミュニケーションが独占してきた
時間の奪い合い競争も変化してきています。
そうしたことから、ヒットゲームを持たない企業が新規のゲームアプリを提供するにはかなり厳しい市場環境になっているといえ、今年後半からは企業淘汰が急速に進む可能性も高まるといえそうです。

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執筆者紹介
佐野 正弘(さの まさひろ) モバイルジャーナリスト 福島県出身、東北工業大学卒。
エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

■定期執筆中の媒体
「佐野正弘が斬る! ニュースなアプリの裏側(日経BP社)」
「佐野正弘のスマホビジネス文化論(アイティメディア社)」 など多数。