スマホゲームマーケティング最前線:広告によるユーザ新規獲得の限界

近藤 塁 近藤 塁
2016/11/10 (Thu)
スマホゲーム集客


スマホゲームマーケティング最前線:広告によるユーザ新規獲得の限界

スマホゲーム市場の現在

スマホゲーム市場は巨大な市場ではあるものの、このところ若干の停滞感があるように感じますよね。

図を見ていただくとわかりますが、スマホゲーム市場は1兆円に迫る巨大市場ではあるものの、市場の成長率という意味では2015年あたりから鈍化傾向にあります。
国内スマホゲーム市場規模・伸び率推移

(矢野経済研究所「スマホゲーム市場に関する調査結果2015」より)

また、その一方で売上ランク上位のタイトルは長寿タイトルが占めるようになってきました。
ちょうど2016年1月1日のGoogle Play売上ランキング30位までを見てみると、リリースから1年以上経過したタイトルが実に77%を占めています。
%e4%b8%80%e5%b9%b4%e8%b6%85%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%88%e3%83%ab%e6%af%94%e7%8e%87

(2016年1月1日 Google Play売上ゲームカテゴリランキング上位30位)

つまり今は、市場が成熟期に入りつつあり、新規タイトルの参入は非常に難しい状況ということは言えそうです。
このあたりは言わずもがな肌感覚で感じている通りだと思います。

市場の成長率が鈍化傾向になった理由ですが、これは当然な部分もあります。
図にある通り、2015年の時点ですでに日本人の半数、スマホ所持者で言えば7割近くが何らかのゲームをプレイしています。
つまり、既にほぼ全員いきわたった状況なんですね。
国内ゲームユーザ数

(米調査会社「DECONSTRUCTING MOBILE & TABLET GAMING 2015」より)

総論としては、高度経済成長期が過ぎ成熟市場に入ったと言えます。高い水準での売上が続いているのでバブル経済でもなく健全な市場と言えると思います。

 

莫大な広告費

こんな成熟市場ですので、既存の売上上位タイトルはその位置を明け渡さないように、新規タイトルは上位に食い込むために、日々熾烈な戦いを繰り広げています。
まさにユーザの奪い合いですね。

実際、2015年の売上広告比率が高い企業の上位50社にゲーム会社が6社入っていて(広告比率が高い200社ランキング2015)、
これは単一の業種としてはかなり多く、それだけスマホゲームの広告費が莫大な額になっていることがうかがえます。

広告比率で見るとまさに「身を削る思い」で広告出稿していると言えます。

 

果たして広告の費用対効果は?

そんな身を削るような思いで広告出稿している訳ですが、果たしてそれに見合うだけの投資に対する事業インパクトはあるのでしょうか?
試しに、シミュレーションしてみました。

仮定としてARPU100円、30日継続率15%程度のタイトルで、リリースから毎月同じ広告予算4,200万円、CPI1,400円だったとします。(本当はリリース後数カ月でCPIは高騰しはじめますが、そこは無視します。)
すると下記のような売上推移をたどります。こちらを基準とします。
基準KPI

基準KPI売上推移

 

続いて、基準から広告費を1割増しにした時の売上推移比較です。出稿を増やしたため若干CPIは悪化しCPI1,450円としました。
広告費1割増KPI

広告費1割増売上推移

御覧の通り広告費1割増し(ここでは420万円)たところで、売上は大して増えてません。ここでは省きますが計算上は利益は却って悪化しています。

こんなことを言ってしまうと身も蓋もないのですが、そもそも市況感的にも構造的にそういいうものであるならば、新規獲得を頑張るよりゲームのARPUなり継続率、つまりLTVが上がった方が事業インパクトという面では手っ取り早い気がします(もちろんそんなに簡単にあがる訳ないのですが)。

ということで、逆にARPU・継続率がそれぞれ1割上がった場合はどのような推移をたどるのか。(広告費は基準から変えない)
下記がそのシミュレーションです。
ARPU・継続率1割増KPI

ARPU・継続率1割増売上推移

先程と比べると、最終的には数千万の差異が出ています。

わかってはいますが、マーケターには残酷な数字です。

 

プロモーションではなくマーケティング

CPIとかROASといった指標で評価しやすいので割と短絡的に広告予算は新規獲得中心に使われがちです。

プロモーションという視点ではもちろん正しいし、新規獲得は重要なのですが、もう一段視座を高くしてタイトルの売上を上げるためのマーケティング活動の一環としてプロモーションがある、と捉えると何も新規獲得だけにお金を使う必要は無くなってきます。

例えば昨年位から注目されるようになったDynalystなどのリターゲティング広告は、広告ではあるものの新規獲得ではありません。
これはある意味で継続率を金で買ってるとも言えますよね。

TwitterやLINE上でのユーザコミュニケーションやカスタマーサポートの強化なんかもLTVに影響しそうですし、ニコ生放送で運営のファンになってもらうこともLTVに影響を与えそうです。こういうのもマーケティング施策の一つです。

また、リリース前に行うクローズドβテストは、もろにLTVにヒットしますが、これも広義のマーケティング活動と言えます。
例えば、以前のように事前登録サイトにアドネットワークで十数万集めてくるようなことはせず、クローズドβテストに予算を割いてチューニングをして、最低限事前予約サービスでローンチを迎える、というような例は多々ありますが、これなどは自然に新規獲得以外のマーケティングに予算を充てている例な訳です。

例えばワールドクロスサーガは弊社クローズドBテストサービス「サキプレ」を実施しており、また事前予約数は3万超程度と適度なボリュームとなっていましたが(【事前予約最前線】 アクセルゲームの新作は王道RPGにひと味加わったオリジナルタイトル。堅実な施策で予約数を積上げ/ワールドクロスサーガ)、リリース後2週間でGoogle Play売上ランキング40位を実現するなど、バランスの取れたマーケティングを行っていました。

『広告によるユーザ新規獲得の限界』などと書いてしまいましたが、言いたいことは『ユーザ新規獲得だけでなくマーケティングは色々ある!』ということです。
また、成熟市場であるスマホゲーム市場に切に求められていることなのだと思います。

過去の日本でも、白物家電を作れば売れる時代から、行き渡った後は、企画リサーチ部門の強化・機能的な差別化・付加価値の追加・顧客サポートの徹底・顧客満足度向上などの工夫をしてきました。
このようにスマホゲーム市場も、やる気のあるマーケターにとっては面白い時代が到来したとも言えると思います。


Author

近藤 塁 近藤 塁
ゲーム会社にてゲームマーケティングに携わった後、ABC社に合流。 現在はゲームマーケティングに係る商材・サービスの企画を行っている。

最近の記事

Similar Entries